「リケジョ」 Part2

理系女子は実際どのくらいいるのか,どんな状況なのかを紹介するページです。

リケジョ

学部別の実態

学校基本調査(2013)の結果(女子の比率)

女子の比率(基本調査).jpg 理系女子と言っても,様々な学部に所属しています。その実態を示す一つの例です。文部科学省が行っている学校基本調査の大学に関する集計結果です。国公私立を合わせた,各学部の在籍者における女子の比率を示したものです。看護系は90%に達していますし,薬学系も5割を超えています。こうやって見ると,工学系が少ないことがよくわかると思います。(実際は,生命理工学部なども含んでいますので,本当の工学部でいくと10%程度だと思います。)
 確かに,看護や薬学は資格に直結していますが,ただそれだけでしょうか?(医学部は医師,薬学部は薬剤師,看護は看護師や様々な検査技師の資格を取得可能です。) 次に,各学部からの就職先をまとめたものを示します。

学校基本調査(2013)の結果(就職先)

職種.jpgこれは,男女問わずの学部別の就職先です。「リケジョ」たるもの,当然「専門職」につくことが目標だと思います。もちろん,医歯薬系で専門職が多いのは・・資格関係から言っても当たり前です。工学部,農学部,理学部を比較してみてください。工学部がかなり専門職が多いことがわかると思います。農学部だと,結構な割合で販売職に回されています。女性の比率が高い上に大学院進学率が比較的低いので,専門職には就きにくいという状況になっているわけです。
 工学部の場合は,女性だから販売職ということにはなりません。(もちろん,本人の資質に拘わる部分も大きいですが・・・) この点で,自分の持てる力を真に発揮できる学問分野だと言うことは理解していただけると思います。(もっとも,実際の就職では大学院卒でも販売職を希望する男子学生もいます。それは,人それぞれなのでしょう。薬学部出身で製造業という人も実際に居ますから・・・)
 また,薬学部の場合,創薬系(4年制)で大学院に行っても製薬会社で研究職にはなれない・・所詮,プロパー(単純に言ってしまうと,製薬関係の販売担当で薬学に関する知識を持っている人ですね・・)にしかなれないと言っている大学もあるようです。(国公立での話です。所属している大学の先生・・もちろん薬学部ですよ・・にそう言われたという女子学生がいました。名工大と連携している名市大の薬学部ではそんなことは絶対にないはずなので,東海地区の方はご安心を・・) この点だと,工学部出身で製薬に入った場合,薬剤関係の知識が無いのでプロパーにされる危険が少ない・・という見方(かなりうがった見方ですが・・)も出来ます。本来の研究者として力を発揮できるわけです。 
ただし,高校教員になりたい場合は,工学部は勧められません。工業高校の教員免許しか取得できないところが多いのです。(名工大もその1つです。) ですから,教員志望であるならば,他の学部をお勧めします。

 「リケジョ」ブームと言っても,工学部は大きく増えたわけではないというのが実態です。でも,本当に専門家として生きていく場合には,工学部というのは専門職に就くための手段としては,すごく有効だと言うことは理解できると思います。


リケジョ

工学部における女子の比率

女子の比率(在籍者).jpg 右のグラフは,2013年5月1日現在(要するに昨年ですね・・)の,東海地区の主要な工学部の在籍者における女子学生の比率を示したものです。かなり低いなという感じです。名工大の2014年5月1日現在では,少し増えて14.3%になっています。他大学の発表がまだですので確実とはいえませんが,名工大は全国の国公立の純粋な工学系としては,女子の比率は最大になっています。(といっても,威張れる数字ではないですが・・・) でも,管理人が名工大に着任したとき(昭和63年)は,女子の比率は3.5%でした。それに比べると,遙かに増えたな・・と思います。
 もう1つ変わってきたなと思うことがあります。名古屋(というか東海地区)固有の風土だったのかもしれませんが,女なんて大学院に行ってどうするんだ・・ どうせ,結婚して主婦になるのだから関係ないだろう・・というような雰囲気が着任当時にはありました。親にそう言われて・・悩んでいる女子学生が多かったのです。今は,その風潮はなくなってきています。 むしろ,女性だからこそ,結婚して子供が生まれた後でも会社に復帰できるように,専門家になっていた方がよい・・という流れが出てきています。トヨタ自動車でも,産休・育休の期間を延ばしてきています。そういった意味でも,女性が自分の力を発揮できる社会に変わりつつあると言うことです。

入学者の状況

女子の比率(入学者).jpgこのグラフは,過去7年間の名工大と名大工学部の入学者における女子の割合を示したものです。名大は頭打ちになっていますが,名工大は,この3年間安定して15%以上の女子学生が入学しています。これは,ある意味では女子学生の安全志向の表れという見方も出来ますが,名工大が女子学生に来てもらえるようにずっと努力してきた結果だと思います。単なる宣伝だけでなく,女子学生が過ごしやすいように,トイレや更衣室の整備から始まって,大学生協の協力の下に女子学生のためのメニューの開発などを進めてきた結果だと思っています。もちろん,就職支援に関しても国立大学の中ではトップクラスだと自負しています。(女子が少なかった頃からの伝統で,特に女子の就職支援には手厚いと思います。でも,男女差別になってしまうかもしれませんね・・・)
 百聞は一見にしかずです。是非,名工大に来て学内を見ていってください。確かに,狭いキャンパスで建物だらけ・・という感じはありますが,きれいで機能的なキャンパスになっていることはわかると思います。(と,信じています!)


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各大学の大学案内を見ると,取得可能は資格というのがたくさん書いてあります。女子学生は資格系(理系では医学,薬学,看護)の分野を志望することが多い状況です。
 確かに,医師,薬剤師,看護師,理学療法士,作業療法士などは立派な専門職(国家資格ですから)ですし,結婚して子育てというブランクがあってもすぐに一線に復帰できるということも事実です。ただし,このことだけは忘れないでください。臨床医学が日本の中心であり,医師は患者の生命を直接預かる仕事であり,判断ミスは許されない厳しい世界だということです。 単に,成績がよいから医学部医学科へ進学するという考え方は,正直に言うと勧められません。やはり,性格的に向いているかどうか・・という点が大切になります。(だから,医学部の入試では面接を課している大学が多いわけです。名古屋大学医学部の後期は地域枠ですが,開始した当時の医学部長は「成績ではない・・何浪してようがよい。地域のために働きたいという学生を採りたい」と訴えていました。) 


 工学部における資格もたくさんありますが,将来を考えた場合に価値があるのは,第1級建築士だけだと思います。土木系においては技術士という資格(JABEEという言葉は聞いたことがあるかと思います)は重要ですが,技術系公務員になってしまった場合には,特に必要な資格ではなくなります。また,最近は企業の方も産休・育休の期間を延ばして,一線に復帰できる体制を整えてきています。

工学部において最も重要な資格は修士号です。科学技術は年々大きく進歩しています。専門職としてやっていくためには,大学4年間の知識だけでは足りないというのが現状です。(建築士は2年間の実務期間が受験の条件になっていますから・・建築の場合は,早く勤める途を選ぶ人は多いです。) 医師も薬剤師も6年制ですよね,これでもわかるように専門家になるためには,6年という期間が必要になっているわけです。名工大の大学院進学率は70%,名大工学部は87%です。現在は,こういう時代だと言うことは心にとどめておいてください。
(余談ですが・・これだけの進学率ですから,修士号というのも比較的とりやすい資格であるという見方も出来ます。もちろん,大学院に進学しても ちゃんと修士号がとれなければ意味はないですがね・・)


薬剤師

pharmacist:米国,druggist(chemist):英国

薬剤師の業務は非常に多肢に渡っています。「調剤」は最も基本的な薬剤師の業務です。「調剤」は単なる「調合」と考えられてきましたが,調剤報酬の改定以来,医師の処方が医学的に妥当であるか,重複投与の防止など,重要な業務になっています。英国でのChemistという言葉が,その立場をよく示していると思います。女性にとって非常に魅力的な資格ですが,現実としては厳しい面があります。今は,4年制から6年制の移行もあり,空白の2年間が生じているため,非常に就職状況がよいのでもてはやされています。就職先を見てみます。
病院・診療所(30%):医師が頂点となっているため,薬剤師の力が弱い(その上,初任給が安い)
薬局(38%):確かに力を振るうことが出来る職場です。(大都市圏では過当競争気味ですが・・)
ドラッグストア(7%):初任給は高い(30万円近くもある)が,販売員とのしての業務が多く過労気味で,昇級も少ない
製薬会社(4%):初任給も高く昇級も多い,が超倍率

薬剤師が真の意味でクリエイティブな仕事であるかどうかは,皆様の判断に任せます。でも,自分の力を思いっきり発揮して,これまでにないものを創り出したいと言う人は,薬学部創薬系か理工系で創薬を学んで大学院まで行って,製薬会社に入った方がよいのではないかなあ・・というのが管理人のあくまで個人的な感想です。

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名古屋工業大学 052-735-5082  豊田工業大学 0120-3749-72